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最高裁判所第二小法廷 昭和23年(れ)1230号 判決 1948年12月11日

主文

本件上告を棄却する。

理由

辯護人北川省三の上告趣意について

記録を調査すると被告人は警察の取調以來終始一貫本件犯行は酩酊の上のことで覺醉後自己の犯行について全く記憶がないと供述していることは所論の通りであり、原判決も本件犯行が飲酒酩酊の上爲されたものであることを認定しているのであるが、犯行當時被告人が酩酊の爲心神喪失の状態にあったかどうかの點について原判決は被害者石田チヨ、高橋武雄、渡辺善雄に對する檢事の各聽取書中同人等のそれぞれ判示に符合する被告人の動静並びに被害顛末の供述記載を證據として援用しているのであるからこれ等の證據によって被告人は本件犯行當時心神喪失の状態にまで至っていなかったものと認定した趣旨であることは明かである。そして酩酊の上の犯行であってその酩酊の程度が心神喪失の程度に達していたかどうかについては必ずしも精神鑑定による必要はなく他の證據によってこれを認定しても差支へないものであるから原審が前示の如く他の證據によってその判斷を下したことをもって違法ということはできない。それ故原判決には毫も所論の如き違法なく論旨は理由がない。

よって本件上告は理由がないから刑事訴訟法第四四六條によって主文のとおり判決する。

以上は裁判官全員の一致の意見である。

(裁判長裁判官 塚崎直義 裁判官 霜山精一 裁判官 栗山茂 裁判官 藤田八郎)

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